初代アンパンマンはうだつのあがらないメタボのおっさん?!【初期アンパンマンの小汚いヒーロー志向】について

今回は、国民的アニメともいえる「アンパンマン」のルーツについてオトドケしてゆきたいと思います。

 




 

現在のアンパンマン原型が誕生したのは、当の作者・やなせたかし氏が描いた短編メルヘン集「十二の真珠 (じゅうにのしんじゅ)」という童話集から。それによると、「アンパンマンは元々アンパンを配る小汚いオッサンだった」という。

 

アンパンマンは元々アンパンを配るオッサンだった 「十二の真珠」

 

アンパンマンの初登場は1969年10月1日発行のPHPという雑誌の10月号で、「十二の真珠」という短編童話の中の一つでした。

その時は普通にお腹の出た小汚いおっさんがアンパンマンだったのだ。

 



 

【以下、初代アンパンマンストーリーを簡略】

貧困や戦争によって飢えに苦しむ子供たちにアンパンを配ることで世界を平和にしようと

独裁国家だろうが紛争地帯だろうが単独で乗り込んで活動。

 

アンパンマンは元々アンパンを配るオッサンだった 「十二の真珠」

 

なのに世界中の人からは戦う力を持たない薄気味悪い男と蔑まれ、救った子供たちからですらダサいとバカにされ、アンパンをあげようとしても、「ソフトクリームのほうがいい」とか言われたりして散々でありました。

 

アンパンマンは元々アンパンを配るオッサンだった 「十二の真珠」

 

それでも、焼きたての「あんぱん」を地上に向けて落として回るアンパンマン。

 




 

この行為はいつか報われ、平和が訪れると自分に言い聞かせ、雨の日も風の日もアンパンを落とし、そして配り続けていたが・・・

 

アンパンマンは元々アンパンを配るオッサンだった 「十二の真珠」


なんと・・・

国境を越えたとたん、未確認飛行物体と間違われ爆撃されてしまうという、衝撃の結末をむかえる。

誰にも知られることなく、虚しく逝ってしまったという残酷な物語で終止符を打つのでした。

 

以上

 



 

キャラ設定もさることながら、なぜオチが爆撃されるまで不毛な物語になったのか、そしてこれを発信するメッセージ性はなんだったのか?不思議なルーツをもつアンパンマンでなのでありました。

 



 

さらに

さすがにこれでは売れないということで、1976年に新タイプが生まれる。

それは「茶こげたボロボロの継ぎはぎマント」に身を包み、ここで現在のスタイルである「アンパンの頭」をもった小汚い正義の味方、「あんぱんまん」が出来ました。

 

小汚い2代目アンパンマン 1976

 



 

しかし初代に続き・・

なぜ、こうも小汚いのか・・・・??

 

それは

「アンパンマン」というのは、当時流行っていた仮面ライダーやウルトラマンなどのヒーローに対する、戦争を経て培われたやなせ氏なりの「正義」のあり方が描かれてるそうです。

 

小汚い2代目アンパンマン 1976

 



 

やなせたかし氏の「あんぱんまん」あとがきによると

「子どもたちとおんなじに、ぼくもスーパーマンや仮面ものが大好きなのですが、いつもふしぎにおもうのは、大格闘しても着ているものが破れないし汚れない、だれのためにたたかっているのか、よくわからないということです。

ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そして、そのためにかならず自分も深く傷つくものです。そしてそういう捨身、献身の心なくしては正義は行えませんし、また、私たちが現在、ほんとうに困っていることといえば物価高や、公害、飢えということで、正義の超人はそのためにこそ、たたかわねばならないのです。

あんぱんまんは、やけこげだらけのボロボロの、こげ茶色のマントを着て、ひっそりと、はずかしそうに登場します。自分を食べさせることによって、飢える人を救います。それでも顔は、気楽そうに笑っているのです。

さて、こんな、あんぱんまんを子どもたちは、好きになってくれるでしょうか。それとも、やはり、テレビの人気者のほうがいいですか。

(やなせたかし 「あんぱんまん」あとがきより)」

 



 

ちなみに、この絵本のアンパンマンは、顔の全てがすっかり食べ尽くされることで、ようやく新しい顔を得ることが出来るようです。食べ物をありがたくいただくという理念が伝わります。

 

小汚い2代目アンパンマン 1976

 



 

文化人類学者の出口顕氏は、これを「自らの死と引き換えに、または命を賭けてその一部を与えて他者の命を救う、臓器ドナーと同様のことを実践している」と読み、このことが、傷つくことなしには正義は行えないという、やなせ氏の主張であり、アンパンマンのエッセンスだと解釈しています。

 

やなせたかし氏

 



 

最後に、やなせたかし氏 「アンパンマンの遺書」より

「アンパンマンのテーマソングはぼくの作詞だが、幼児アニメーションのテーマソングとしては重い問いかけになっている。ぼくはお子様ランチや、子供だましの甘さを嫌った。

なんのために生まれて

何をして生きるのか

わからないまま終わる

そんなのは いやだ!

何をしていきるのか、自分に問いかける時が来た。」

 

今とは、想像もできないくらいの重いメッセージ性を秘めてたアンパンマン。

それを踏まえて噛み締めるように観覧するのも、またひとつの愉しみではないでしょうか。

 

 

記/ Charlie Apple (2014.07.18)

 

タグ:文化書籍珍話社会歴史アニメマンガ